秘密結社GENZ

情報部員報告3

【カプチーノとアメリカ文化、カルボナーラにフレンチトースト】



こんばんは。
毎度お馴染み、秘密結社GENZ国際情報部員不定期報告です。

今回も、コーヒーにも関わる話から・・・

さて、玄豆屋さんではカプチーノをどの様に出しているのでしょうか。残念ながら
僕はCafe de nui でカプチーノを頂いた事がないのですが・・・
日本でカプチーノを頼むと、シナモンスティックもしくはパウダーが付いているというのは珍しくないですね。缶コーヒーの”カプチーノ味”にも,ほのかにシナモンの香りをつけてあったりするし。

日本で暮らした事もあるイタリア人の同僚が言います。
「あんなものはイタリアには無い。カプチーノはエスプレッソにスチームで泡立てたミルクだけだ。」と。
(ちなみにドイツではなぜかココアパウダーがかかってました。)

また、彼ら(生粋のローマっ子,男女2名)はさらに言います。
「どうしてイタリア以外の国(近場のフランスでさえ)でカルボナーラを食べると、生クリームかミルクが必ず入っているんだ?イタリアのは卵だけだ。」と。
ちなみにベーコンも入れないそうです。ものの本に書いてあるレシピでも生クリームか牛乳を入れる事になっていますね、日本では。卵だけではボソボソになってしまいそうですが。

(ちなみに欧州では、卵は一般的に生や半熟では食べられません。最近日本でも稀に有るそうですが、こちらの卵はある種のサルモネラ菌入りが普通なのです。したがって熱をよく通すか、あるルートを通じて無菌の卵を手に入れなければ命に関わります。だから卵だけのカルボナーラって・・・?)

「ウマけりゃどっちでもいいじゃない、ヒトそれぞれの好き嫌いもあるし。」と、ノンポリの僕は思いますが、入っていて当たり前,付いてるのが普通、と思っていたモノが,実はいわゆる”本場”では使われない、あり得ない組み合わせである事を知った時はちょっとしたカルチャーショック。 じゃ、誰がそれを始めたのか?


フレンチトーストという物があります。でも、ホントはありません!?
これもフランス人の同僚が怒ります。「あんなものフランスには無い!」と。

これらの話は、出張先のフランスで、前出のイタリア人たちと、このフランス人女性の同僚と、食事を共にしながらの話。

<その食事をしたレストランのある、南フランス トゥーロンの夕暮れ。>
(Toulon、ニースとマルセイユの中間の為か、観光地ながら観光客の少ない穴場ですぞ。魚介類がとてもおいしい所です。生牡蠣、パエリア、ブイヤベース、どれも絶品!)


そういえば確かにフランスでフレンチトーストというモノは見かけないなぁ。そこで、僕は彼女に質問。「じゃ、フレンチフライは?」言わずと知れたジャガイモの揚げたモノ。実は僕らの勤める、ドイツの会社の食堂では、ドイツ人の給仕さんが「フレンチフライ」という言葉を使います。でも、やっぱり彼女の答えは「ノン!フランスでフレンチフライとは言わない」との事。隣のドイツでさえ一般的に使うのに。じゃ、やっぱり誰が付けた名前なんでしょう?

彼らは口を揃えて言います。「どれもこれも、それはみんなアメリカ人の仕業だ!」

考えてみれば、ハンブルグでハンバーグステーキやハンバーガーが名物と言うことも無いし、ウィーンでウインナ―ソーセージがおいしいとも聞かないですね。(僕の住むフランクフルト近郊ではスーパーに行けば、いわゆるフランクフルト。フランクフルターソーセージってのがちゃんとあるけど、これとウインナコーヒーは例外なのかも。因みにドイツでいわゆるハンバーグに近いモノはHoch steak−発音はおそらく”ホッホステーキ”―というのがありますがハンバーグとは呼ばれてません。) 逆に、数々のヨーロッパの国々で(いや世界中に)必ずあるのが”マクドナルド”や”バーガーキング”、”ピザハット”に”ケンタッキーフライドチキン”。ハードロックカフェに最近はプラネットハリウッド等など。(食べ物を離れればオモチャ屋の”トイザラス”なんかもそう)

ジャンクフードの類に目の無い僕にはこれらは欠かせないものです。仕事などで行った国では、チャンスがあれば必ず立ち寄り、値段とメニューをチェックしています。(某 Cafe de nui 常連の女性客の誰かさんの様に、どこに行ってもチーズバーガーしか食べずに、比較検討の基準とするほどストイックではありませんが。むしろ、その国に固有のものを探そうとしてしまいます。各国のマクドナルドの違いなどの話も面白いのですが、それはいづれまた。)


いまや、先進国と呼ばれる国で、マクドナルドに入った事のない若者は珍しいでしょうし、ロシアや中国、果てはエジプトやインド,イスラエルにさえマクドナルドは有ると聞きます。(インドのマクドナルドにはマハラジャバーガーってのがあると聞いたが事実だろうか?) 1年と少し前、仕事でベトナムに出張した事があるのですが、ホーチミンシティ(旧サイゴン)にさえ、マクドナルドではないものの、明らかにそれを模したハンバーガーショップがありました。(ハードロックカフェは贋物のように小さいのがちゃんとあった!)

こうして見ると、これはアメリカによる食文化侵略ではないかと思えて来ます。実際に目に見えるハンバーガーショップの進出のみならず、フレンチトースト、カプチーノ、と昔からアメリカは食文化世界征服を進めてきたようにも見えます。イタリア料理やピザに欠かせない”タバスコ”も実はアメリカの物。 ”ベーコンを入れるカルボナーラ” というのも、ただの揚げイモを ”フレンチフライ” と名付けるセンスも、そう考えるとアメリカっぽく感じられて来るのは僕だけでしょうか?

イタリア系の移民も多かったであろう黎明期のアメリカで、他から少しでも抜きん出た商売をしようと思ったら、同じカプチーノ,同じカルボナーラ、では敵わない。”何か付加価値を加えて”というのは極めて自然な発想。新しい何か”を売り出す時に、ヒトを惹き付けるネーミングというのも大事な事。 ”フレンチ****”という名はそんな中から生まれてきたんじゃないか、と想像できませんか?
(どなたか”フレンチトーストの起源”を御存知なら、教えてください。)

フランスという国につく枕詞はたいてい「文化の薫り高い」等々。おしゃれで洗練されたイメージは、その頃既に出来あがっていたのか、それとも移民達の欧州への望郷の思いがそうさせたのか・・・
そんなスピリットが現代のアメリカ食文化世界征服作戦?に繋がっているような気がします。ひいては生活の根幹である食生活だけに、その基本姿勢が、現在のアメリカという国の外食産業も含めた各企業の姿勢、さらには外交姿勢にも反映してる、と言ったら言いすぎですか?・・・と、今回は世界征服の話で、だんだんスパイの報告らしくなって来ましたね。

しかしながらさすがのアメリカも、イタリアという国においては、やや苦戦を強いられてる様です。イタリアでは”マクドナルドにピザがある”というだけでもすごい事ですが(当然ピザハットなど入る余地は無い、ピザハットの半額以下で遥かに美味いピザが食えるんだもの) チキンにおいても”ケンタッキー”は今だイタリア進出を果たしていないらしいし、(ローマ勤務の同僚が無いと言ってます。未確認情報)ドイツも数年前まで”ケンタッキー”は無かったそうです。どちらの国も地鶏のチキンがとても美味しく(実際ウマい!)アメリカンチキンの味では太刀打ちできなかったとの事。痛快痛快。ただしマクドナルドのコーヒーはエスプレッソではなく”アメリカーナ”(いわゆるフツーのコーヒー)だった様な気が・・・今度行ったら確認しなくちゃ。


そういえば、”玄豆屋の雑学”の「エッフェル塔とエスプレッソコーヒー」に出ていた”ハリオール”によるエスプレッソの手軽な作り方。ドイツのスーパーで、ハナから”エスプレッソメーカー”として売っているのを発見しました。モノはデンマーク製。箱書きには”Kenya(ケニヤ) espresso”とあります。(そういえばドイツ人の同僚から、アフリカでは轢いた豆にそのままお湯を加え、沈殿させて上澄みだけを飲む、と聞いたことがあるけど、これの事かなぁ?)

早速購入、愛用しています。確かにオイシイです。が、本来のエスプレッソとは成分、特にカフェインの含有量が、かなり違うはず。カフェインは水に溶けやすい性質の物質ですから、水に浸ってる時間の少ない”蒸気で瞬間的に入れる”エスプレッソは、コーヒーの味の濃さに比べカフェイン量は低いと聞きます。”ハリオール式”はむしろ全く逆。ドリップ以上に水に浸る時間が長いので、味、カフェイン共に濃い、という物になっているはず。

<これがそのエスプレッソメーカー。写真では読めないと思いますが、KENYAESPRESSOの下の細かい字の中に日本語の表記もあります。デンマーク製、40DM(2,400円) 弱くらいだったかな。>



ちなみにその器具自体の名は「フレンチプレス」と説明書にありました・・・さて、この名もやっぱり ”アメリカ人の仕業” なのでしょうか??

それではまた。
18/MAR/00    ドイツにて 国際情報部員より
次回は現代フランスと直線について、の予定です。



玄豆的雑学メニューへ